雪の桜田門で受けた誰何
どんな伝承か
昭和十一年二月二十六日の早朝、著者は名古屋からの夜行を新橋で降りた。大雪である。四谷までなら鎖を巻いて行くという円タクに乗り、日比谷から桜田門のあたりへ差しかかると、白一色のなかを兵隊らしい黒い影がちらちら動いている。演習だろうと思った瞬間、ヘッドライトの中に銃剣がひらめき、止まれと誰何された。ロータリーには重機の銃座が据えられている。押し問答のすえ、駆けつけた少尉が、九時までこの道は通行止めだから虎ノ門から溜池を回れと告げた。頭巾からのぞく顔は紅顔の美少年だったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
私の心霊術(長田幹彦・1955年(昭和30年))
『私の心霊術』は、長田幹彦が昭和三十年に著した心霊研究の随筆集である。死後に残る霊や地獄・極楽をめぐる考えを述べ、熊本の家系や安達謙蔵との交わり、東京放送局の文芸顧問だったころの回想、霊友会など戦後の新興宗教への批判、前著『霊界』への反響と自らの信仰を語る。「心霊科学の来世観」「霊界の構造」「ぼくの信仰」などの章からなり、末章「ある霊媒の生態」では霊媒服部との実験とそのトリックの顛末を描く。