急死した親友の通夜に起きた怪異
どんな伝承か
えみ子の事件が収まると、今度は親友の山川が突然脳溢血で死んだ。相当な酒客で、決算のあとでひどく疲れていたらしい。朝十時に家を出て自家用車で出勤したが、丸の内の会社の三階まで上がるのに苦労し、女秘書と話す間もぜいぜいと浅い息をしていた。いつもは断っている甘い苺のジュースを頼み、秘書の手を握って二言三言冗談を言ったかと思うと、コップを口へ持っていったままソファからずるずる落ちて動かなくなった。会社中が大騒ぎになり、隣のビルの診療所の医師が来て脳溢血と診断したが、それきり生きなかった。その晩、下落合の自宅へ運ばれて通夜が営まれ、夜遅く怪異が起こったのを著者は列席して実見したという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
霊界五十年(長田幹彦)
『霊界五十年』は、長田幹彦が自らの心霊体験を一人称でつづった随筆集である。霊媒亀井三郎の実験に立ち会った話に始まり、大正十四年に東京中央放送局で見た変死した技師の霊、自殺者の霊、神隠し、心霊写真、死者の霊との交わりなど、長年にわたって見聞きした出来事を語る。「亀井霊媒の実験」「放送局の幽霊」「霊界夜話」「幽霊のキスマーク」などの短い章を連ね、心霊研究の知人や医師との問答を多く交える。