墓を守る者に現れる山川の霊
どんな伝承か
山川の霊はその後、女秘書波川のアパートにもよく出たという。翌年の命日の四日前、大竜寺という寺で年回が営まれたとき、著者の前にも山川が例の背広姿でひょっこり現れたが、少し顔が痩せてやつれていた。波川に聞くと、このごろひどく顔が変わってきたという。秋の晩、著者は染井にある山川の墓所へ度々行った。立派な石造の五輪塔まがいの墓で、花や香がいつも絶えなかった。妻とは思えず、波川かと聞くと彼女はすでに別の男と関係ができ、山川のことは思い出しもせず霊も現れなくなっていた。ある春の晩、銀座で会った松原が墓参の主で、家にも仏壇を作って朝夕拝み、月に一度ほど山川が現れると語った。山川の姉のもとにも霊は一、二度現れたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
霊界五十年(長田幹彦)
『霊界五十年』は、長田幹彦が自らの心霊体験を一人称でつづった随筆集である。霊媒亀井三郎の実験に立ち会った話に始まり、大正十四年に東京中央放送局で見た変死した技師の霊、自殺者の霊、神隠し、心霊写真、死者の霊との交わりなど、長年にわたって見聞きした出来事を語る。「亀井霊媒の実験」「放送局の幽霊」「霊界夜話」「幽霊のキスマーク」などの短い章を連ね、心霊研究の知人や医師との問答を多く交える。