県下随一の狸祠・寺町のお六つ大明神
どんな伝承か
徳島の寺町に、お六つあんと呼ばれる狸神の祠がある。銅板葺き二層の屋根に唐破風の向拝を備え、狸の祠としては県下一、おそらく日本一の壮麗さである。参詣者は毎日数百人、夏の夕方からは千数百人に達し、油揚げや赤い小田原提灯を手に押し寄せ、向かいと隣の油揚屋はこの祠の供物で暮らしている。信者は株屋や相場師、商人、芸者や酌婦、合格を願う学生などで、とくに投機に霊験があるという。管理する妙長寺は狸を祀ったのではないとするが、由来には、南の寺の狸の祠を譲り受けた説、松ノ下の大松に棲んだ狸の頭を祀った説、半田から主人について来た狸お松の説がある。縁の下には今も老いた狸がいるともいう。
原典より
徳島の寺町に俗にお六つあんと呼ばれる狸の神の祠がある。—— 阿波の狸の話(笠井) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
阿波の狸の話(笠井)
『阿波の狸の話』は、脇町の笠井という著者が、阿波国の各地に伝わる狸の話を集めて書いた本である。狸同士の化かし合い、狸使い、狸憑き、狸医者、狸を祀る祠などを題ごとに分け、郡村名や人名を挙げて、明治・大正の狸憑きの実話やお六つ大明神の信仰の様子も記す。後半に余材追録と、著者が萬福寺で狸に憑かれる人や住職と問答した記録を置き、巻末の「阿波名狸録」で名のある狸を徳島市と各郡の部に分けて並べる。