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軒に残された一房の髻と壁の血

所在地岡山県岡山市北区吉備津
年代不明(雨月物語)
登場正太郎、磯良の死霊、彦六
出典日本の幽霊たち ― 怨念の系譜

どんな伝承か

『雨月物語』の「吉備津の釜」の結末である。物忌みの最後の夜、五更の空がしらじらと明けかけたころ、正太郎は彦六を呼ぶ声に誘われ、まだ明けきらぬうちに斎みの家の戸を開けようとした。戸を開けきらぬそのわずかの間に、命は奪い尽くされてしまう。夜が明けて戸口の脇の壁を見れば、なまなましい血がしたたって地に伝わっていたが、屍も骨も見当たらない。月明かりに軒の端を照らしてみると、そこにあったのは男の髪の髻ばかりで、ほかには何一つ残っていなかった。裏切られた磯良の怨念は、壁の血と一房の髪だけを残して物語を閉じる。

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※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません

出典の文献について

日本の幽霊たち ― 怨念の系譜(阿部正路)

『日本の幽霊たち――怨念の系譜』は、阿部正路が書きおろした日本文学の幽霊論で、刊行は日貿出版社が手がけた。『竹取物語』『源氏物語』『平家物語』などの物語、『日本霊異記』から『遠野物語』『聴耳草紙』に至る説話、能と歌舞伎、さらに三遊亭円朝・泉鏡花・森鴎外・小泉八雲らの近代の作品に現れる幽霊をたどり、怨念の系譜として読み解く。第一章で幽霊の時・季節・姿・場・目的を論じ、終章で稲生屋敷の物怪や百鬼夜行など幽霊の周辺に及ぶ。

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