竹の切り口に倒れた旗野
どんな伝承か
泉鏡花「妖怪年代記」で、妾お村を斬らせた旗野の最期。お村の惨殺に続いてお春が蜘蛛に取りつかれて悶死すると、旗野もまた次第に正気を失っていった。何か姿のあるものに導かれるようにして外へさまよい出た旗野は、かつて自分が切りつけた竹の切り口の上に倒れ込み、胸を刺し貫かれて死んだ。罪もなく殺された者がこの世に残した怨念の激しさが、お春に続いて館の主の身にも及んだものとして語られる。館は千石取りの旗野の屋敷で、のちに松川私塾となった家である。
原典より
旗野も神経が狂い出し、何やらむ姿あるものにみちびき出され、自らが切りつけた竹の切口に転び、胸をつらぬかれて死ぬ。—— 日本の幽霊たち ― 怨念の系譜(阿部正路) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の幽霊たち ― 怨念の系譜(阿部正路)
『日本の幽霊たち――怨念の系譜』は、阿部正路が書きおろした日本文学の幽霊論で、刊行は日貿出版社が手がけた。『竹取物語』『源氏物語』『平家物語』などの物語、『日本霊異記』から『遠野物語』『聴耳草紙』に至る説話、能と歌舞伎、さらに三遊亭円朝・泉鏡花・森鴎外・小泉八雲らの近代の作品に現れる幽霊をたどり、怨念の系譜として読み解く。第一章で幽霊の時・季節・姿・場・目的を論じ、終章で稲生屋敷の物怪や百鬼夜行など幽霊の周辺に及ぶ。