寒かろうと声を出す兄弟の蒲団
どんな伝承か
小泉八雲が結婚して間もないころ、妻の節子から聞いた鳥取の蒲団の話。貧しい父母を亡くした幼い兄弟が、冬の日に最後に残った蒲団まで家賃の形に取り上げられ、雪の中へ追い出されて抱き合ったまま死んだ。のちにその蒲団を掛けて眠った旅人の耳に、兄さん寒かろう、お前寒かろうと言い交わす声が聞こえた。わけを知った宿の主人が、千手観音堂の墓地に眠る兄弟のためにこの蒲団を寄進して霊を慰めると、それきり蒲団はものを言わなくなったという。八雲が日本の幽霊に心を寄せたきっかけといわれる。
原典より
その後、その蒲団をつけて眠る旅人の耳に「あにさん寒かろう」「おまえ寒かろう」という声が聞える。—— 日本の幽霊たち ― 怨念の系譜(阿部正路) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の幽霊たち ― 怨念の系譜(阿部正路)
『日本の幽霊たち――怨念の系譜』は、阿部正路が書きおろした日本文学の幽霊論で、刊行は日貿出版社が手がけた。『竹取物語』『源氏物語』『平家物語』などの物語、『日本霊異記』から『遠野物語』『聴耳草紙』に至る説話、能と歌舞伎、さらに三遊亭円朝・泉鏡花・森鴎外・小泉八雲らの近代の作品に現れる幽霊をたどり、怨念の系譜として読み解く。第一章で幽霊の時・季節・姿・場・目的を論じ、終章で稲生屋敷の物怪や百鬼夜行など幽霊の周辺に及ぶ。