幽霊が住むと噂された安値の家
どんな伝承か
盛岡に住む著者の知人某は、アパートが手狭になったので一軒家を借りようと物件を探すうち、新築して間もない家が破格の安値で売りに出ていると聞き込んだ。市の中心から車で十五分ばかりの住宅地で、近くにスーパーや小学校もある。ただし、その家には幽霊が住みついているという噂があった。某は不動産屋から一晩だけ鍵を借り、会社の同僚二人を誘って泊まった。家は新婚間もない夫婦が建てたもので、交通事故で急死した妻が自分の死に気付かず暮らし続けているという。夜更け、二階から階段を下りる足音が台所へ向かい、水を流す音と茶碗を洗う気配がした。電気をつけても誰もおらず、水音と陽気な鼻歌だけが聞こえた。
原典より
現代版『遠野物語』の続きである。—— 黄昏綺譚(高橋克彦・幽霊・怪異体験・1996年(平成8年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
黄昏綺譚(高橋克彦・幽霊・怪異体験・1996年(平成8年))
『黄昏綺譚』は、高橋克彦が連載をまとめ、一九九六年七月付のあとがきを付したエッセイ集で、吉田光彦の挿絵と組んだ画文集である。著者が体験し見聞きした分身や生霊、寺での怪異、前世、UFOなどの不思議と、史料や神話に残る怪異、宮澤賢治をゴッホの生まれ変わりとみる考えを語る。「この世に幽霊はいる」「不思議な話が史料や神話に」「宮澤賢治はゴッホの生まれ変わり!!!」の三部に分かれ、巻末にあとがきと丸尾末広の解説「黄昏るペン」を収める。