山婆となって毎年帰る娘と封じの石塔
どんな伝承か
佐々木喜善『東奥異聞』は、サムトの婆の原話をより恐ろしい姿で伝えている。岩手県上閉伊郡松崎村字ノボトに茂助という家がある。昔この家の娘が、裏の梨の木の下に草履を脱ぎ置いたまま行方不明になった。幾年か経ったある大嵐の日、娘はひどく奇怪な老婆となって家人に会いにやって来た。その姿はまったく山婆のようで、肌には苔が生え、指の爪は二、三寸伸びていた。一夜泊まって帰り、それから毎年やって来たが、その度に大風雨があって一郷がひどく難儀するので、村方からの掛け合いとなった。茂助の家は巫女山伏を頼み、青笹村との村境に石塔を建てて封じた。石塔は大正初年の大洪水で流失したという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
黄昏綺譚(高橋克彦・幽霊・怪異体験・1996年(平成8年))
『黄昏綺譚』は、高橋克彦が連載をまとめ、一九九六年七月付のあとがきを付したエッセイ集で、吉田光彦の挿絵と組んだ画文集である。著者が体験し見聞きした分身や生霊、寺での怪異、前世、UFOなどの不思議と、史料や神話に残る怪異、宮澤賢治をゴッホの生まれ変わりとみる考えを語る。「この世に幽霊はいる」「不思議な話が史料や神話に」「宮澤賢治はゴッホの生まれ変わり!!!」の三部に分かれ、巻末にあとがきと丸尾末広の解説「黄昏るペン」を収める。