精神を癒す定義温泉と弾丸除けの如来
どんな伝承か
明治期にいたるまで、神社仏閣を拠点とした民俗治療センターが各地に数多くあった。静岡県の穂積神社では神官が朝夕二回神前で祈禱し、神殿前の釜で沸かした湯を患者の頭部に注ぐ湯祈禱を行ない、岐阜県の神官宅や徳島県の阿波井神社などもその例である。温泉療法では宮城県の定義温泉が有名で、報告者は「精神病者の民間水治療方場として理想に近きものなり」としている。近くには通称「定義如来」という寺院があり、病者は平癒を祈願した。この寺院は徴兵除け・弾丸除けの祈願でも有名だった。こうした民俗療法の背景には、狐憑きなどが治療可能だとする経験的・宗教的な信念があったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
幻視する近代空間 ―迷信・病気・座敷牢、あるいは歴史の記憶(川村邦光・現代(近代史研究))
民俗学者・川村邦光が、近代日本が在来の習俗や憑きもの信仰をいかに〈迷信〉として再編し、狐憑きを脳病・神経病・憑依妄想へ病理化したかを、具体的事件・事例に即して論じた近代史。