灸の忌み日は元日、忌み所は目玉
どんな伝承か
灸をすえるにも日の吉凶があるという俗説について、著者は一つの話を挙げる。昔、大阪に評判の名医がいて、頼まれれば灸をすえていた。ある人が、灸には悪い日やすえてはならない場所があるというが本当かと尋ねると、医師はあると答えた。それはいつで、どこかと重ねて問われると、灸をすえてはならない日は正月元日、すえてはならない場所は目玉で、それ以外は少しも構わないと答えたという。著者は、さすがに名医だけあって言うことが人並み外れていると感心している。
原典より
さらに、何れの日、いずれの場所と尋ねたれば、灸すまじき日は正月元日、灸すまじき場所は眼玉である、その他はすこしも構わぬと答えたそうだが、…—— 迷信の諸相・宗教の真相(井上円了・1916年(大正5年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
迷信の諸相・宗教の真相(井上円了・1916年(大正5年))
『迷信の諸相・宗教の真相』は、井上円了が大正五年に刊行した『迷信と宗教』を、新しい題を付け現代の表記に改めて翻刻した本である。琉球・伊豆七島・壱岐対馬から北海道まで、著者が各地を巡回して見聞した犬神・人狐・河童・狐憑きなどの迷信と、怪火・天狗・幽霊・鬼門・卜筮・家相・禁厭など全国共通の迷信を挙げる。迷信の利害と原因を論じたのち宗教の真相を説き、余論に妖怪学の短編、附録に幽霊鬼神と霊魂不滅をめぐる論を収める。