稲束泥棒を突く大宝寺のわら人形
どんな伝承か
大正一三年、いまは鶴岡市に含まれる西田川郡大宝寺村で、村ぐるみの呪詛が行われた記録がある。秋の取り入れが済んだあと、積んでおいた稲束が次々と盗まれた。困り果てた部落では八二戸から一人ずつが刈り跡の田に集まり、犯人に見立てた藁人形をこしらえて杭に縛りつけた。人々は口々に罵りながら、代わる代わる竹槍でその肩や腹を突き、刑罰を加えたという。男手のない家からは中年の女も出て、衆人環視のもとで行われたこの共同の呪いに、部落中の者が震え上がったと伝わる。こうしておけば三年のうちに必ず犯人の身に異変が起こると信じられていた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代の迷信(今野圓輔・現代教養文庫・1961年(昭和36年))
『現代の迷信』は、今野圓輔が昭和三十六年に著した、現代の俗信を一般の読者に向けて説いた読み物である。昭和三十年代の新聞・雑誌の報道や聞き書きを主な材料に、縁起かつぎ、前兆・占い・禁忌・まじない・願掛け、憑きもの落としの殺人や新興宗教の騒ぎまでを全国から拾い集めている。「現状」「過誤と真実」「その背景」「迷信論」の四部から成り、巻末に読者の問いに答える迷信身の上相談を付ける。