年番を引き渡す斉藤稲荷の初午オビシャ
どんな伝承か
足立区の北部にある入谷地区では、斉藤・福田・市川などのイッケ(同族)ごとに稲荷を祀っている。斉藤イッケ十五軒が祀る斉藤稲荷では、毎年二月の初午にオビシャが行われる。一年交替の年番が各家から米を五合枡に一杯ずつ集めて回るが、米を作らなくなってからは五百円を集めている。当日はどの家も朝から赤飯をふかして参拝する。昼過ぎに年番の家へイッケが集まるとすぐに年番の引き渡しがあり、預かってきた稲荷社の地代に一割の利息を付け、帳面とともに次の年番へ渡す。その後は赤飯や甘酒、鯛の折箱が並ぶ、婚礼のような酒宴になるという。
原典より
年番は稲荷社の地代を預かっているので、一割の利息をつけて帳面とともに次の年番に引き渡すのである。—— 厄除け――日本人の霊魂観(佐々木勝・民俗学・厄除け信仰・1988年(昭和63年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
厄除け――日本人の霊魂観(佐々木勝・民俗学・厄除け信仰・1988年(昭和63年))
『厄除け――日本人の霊魂観』は、佐々木勝が昭和六十三年に名著出版から刊行した民俗信仰の論考集である。鬼・悪魔・疱瘡神・一つ目小僧など人に災いをもたらす神霊を「厄神」と総称し、その来訪を防ぐ呪術と祀り上げる祭祀を、著者の民俗調査と国学院大学民俗学研究会の採訪記録などの事例から説く。禁忌と呪術、百鬼夜行と目籠、鬼の宿と笹神様、年神とミタマの飯、厄年と年祝い、正月行事と司祭者など八章からなり、うち四章は書き下ろしである。