三之助家の前で止まった馬方の音
どんな伝承か
土淵村本宿の三之助という家がまだ栄えていた頃、奉公人の巳代吉ともう一人の若者が、蒸し暑い夏の夜に軒下へ寝台を組んで寝ていた。夜半、田んぼの向こうの山際から、大勢の馬方が来るような鈴の音がにぎやかに近づき、街道へ出て三之助の家の前でぴたりと静まった。そして『この家からは何を持って行こうか』と言う人声が聞こえたように思えたという。その後この家は火事で滅んで跡形もなくなり、家が傾く前触れだったのかと語られている。
原典より
此家からは何を持って行かうか、と云ふ声がしたやうに、男等は思つたとのことである。—— 佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。