鍋ヶ坂の白い雀に鶏を盗られた男
どんな伝承か
遠野の町外れ、愛宕山の下の鍋ヶ坂には昔からたちの悪い狐がいた。町の菊池という男が綾織村で鶏を五、六羽買い、俵に入れて背負ってこの坂を通ると、道の真ん中に見たこともない白い雀が舞い降りてじっとしていた。鳥好きの男が捕まえようと手を伸ばすと、するりと指の間を抜けて三歩ほど歩いては止まる。邪魔な鶏の荷を道端に下ろして雀にかかりきりになっていると、雀はぷいと飛び去り、気づいた時には鶏の荷はとうに無くなっていたという。
原典より
往来の真中に見たこともない白い雀がパサパサと飛び下りてじつとしてゐた。—— 佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。