小正月の屋根の呪文と痩狐
どんな伝承か
狐の婿入りの一行が退治された日、ただ一匹逃げ延びた痩狐が、山に残っていた跛狐のもとへ駆け込み、仇を討つと息巻いた。小正月十五日の夜にあの家の屋根でタンコロリンと三度唱えれば中の人間が皆死ぬと言うので、跛狐は、屋根に登る音を聞いた爺が褌を鉤の鼻にかぶせてキジンカヘレと三度唱えれば、お前の方が死ぬと止めた。痩狐は人間がそんな秘事を知るものかと聞かなかったが、跛狐は翌日ひそかに爺へ知らせておいた。小正月の夜更け、痩狐が屋根に登ってどさりと音を立てると、爺は褌を外して鉤の鼻にかぶせ、キジンカヘレと三度唱えた。何かが屋根から転げ落ちる音がして、翌朝、雪の上に痩狐が死んでいたという。
原典より
翌朝起きて見ると一疋の痩狐が雪の上に死んで居た。—— 佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。