口癖で盗人を見透した六平
どんな伝承か
焼き餅焼きの六平は、帰るたびに玄関で見透したぞと言う癖から、何でも見通すと評判になった。ある時、失せ物の相談に来ていた人が、帰ってきた六平の口癖に自分の来訪を見抜かれたと早合点し、断りきれずに連れて行かれた先は、殿様の宝物がなくなった城だった。女房は逃げ帰れとひそかに教えた。六平は七日七夜の行を申し出てでたらめな呪文を唱えていたが、三日目の夜半、忍び寄る気配に思わず見透したぞと叫ぶと、御殿の女房がひれ伏し、宝の鏡を盗んだのは自分だ、元に戻すから許してくれと小判百両を差し出した。翌朝六平が鏡は元の所にあると告げると、その通り見つかり、六平は褒美を得て、以後は見透しをやめたという。
原典より
見ると此処の御殿に仕へて居る女房であつて、怖々六平に言ふことには、とても貴方の見透しに遭ってはかなひません。—— 佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。