庄屋に化けて七十両を貸した狐
どんな伝承か
ある男が川岸の古柳の下で、狐が柳の葉を濡らして体に貼りつけ、村の庄屋の姿に化けるのを見た。男は素知らぬ顔で声をかけ、博奕に負けたので七十両貸してほしいと頼むと、化けた庄屋は今夜届けてやると約束した。夜、本当に化け庄屋が来て金を置き、礼にと男が出した赤魚を、門を出るなりむさぼりながら帰っていった。翌朝確かめると金は本物で、隣家では箪笥の三百両から七十両が消えたと騒いでいた。婆は隣村に嫁いだ娘が来て箪笥を開けたと言うが、娘は来ていないと言う。男は事情を話して金を隣家へ返し、隣同士で喜び合ったという。
原典より
可笑しいと思つて見て居ると、狐は柳の葉をちぎって其れに水をつけて頭や鼻先きや手足に一生懸命に貼着けた。—— 佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。