堀から出た仙台の千両箱
どんな伝承か
或所に大層嫉妬深い夫があり、外から帰るたび「今日は誰某が来たな」と言い当てるので、女房は「この偽八卦が」と呆れていた。それが評判となり、仙台様の金倉から千両箱が十箱盗まれた折、南部の名高い八卦置きとして駕籠で迎えられた。国境の五輪峠で休むと、供頭の侍が「金箱の在り処は自分が知っている。二箱を分け、残る八箱は八卦で当てたことにせよ。断れば命はない」と持ちかけた。偽八卦は言われたとおり、金箱は城の後ろの堀の泥中にあり、二箱はすでに西国へ渡ったと告げた。堀をさらうと八箱が出て、褒美に千両箱一箱を得て帰り、夫婦仲よく暮らしたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・大正・昭和(東北民俗))
『遠野物語』の語り手・佐々木喜善が大正昭和期に郷里岩手で採集した東北の昔話・伝説の集成。冒頭の『奥州のザシキワラシの話』では、旧家の座敷に出没し家の盛衰を司るザシキワラシの諸相を集める。『江刺郡昔話』『紫波郡昔話』に続き、『東奥異聞』では不思議な縁女の話・黄金の牛・磐司磐三郎・千曳石・赤子抱き・偽汽車など奇譚を収める。