追って来る死人と消えた魚
どんな伝承か
或る時、三太郎という道化者が町へ行く途中、狐が二、三疋日向ぼっこをしているのを見た。魂消らしてやろうと近寄ってだあっと叫ぶと、狐は飛び上がり、尾の先を太くして山へ逃げた。三太は狐など今のことも悟れぬ畜生だと笑い、町でも吹聴した。夕方、魚を買って帰る道で急に日が暮れ、灯りを頼りに一軒家へ宿を取った。白髪の婆が隣まで行くと言って出たきり戻らず、焚木を探すと隅に死人があり、唸りながら動き出したので外へ逃げた。死人はどこまでも追って来る。大きな木に登ると死人は下を走り過ぎ、夜が明けるとそれは柿の木で、柿を取ろうとして枝が折れ川へ落ちた。気がつくと朝に狐を驚かした所を這い回り、魚は影も形もなかった。
原典より
或時、三太郎と謂ふ道化者が町へ行く途中で、狐が二三疋日向ぼつこして居るのを見た。—— 佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。