狐を嘲って化かされた馬喰
どんな伝承か
ある馬喰が、マガキ、マンコという狐のすむ野原の道で、狐を小馬鹿にして通った。すると歩いても歩いても家にたどり着かないので、背負っていた油揚げを投げ出すと、すぐそこが自分の家だった。狐の知恵もその程度かとあざ笑うと、今度は目の前に大きな川が現れて先へ進めなくなった。こんな所に川があるはずはないと、転びながらもがいて渡ろうとしていると、家の者が出てきて、なぜ軒の藁を引き抜くのか、また狐に化かされたのかとあきれた。見れば川の中と思っていたのは自分の家の軒先で、石と思ってしがみついていたのは藁だったという。
原典より
或るハクラクが、マガキ、マンコと云ふ狐の居る野原道で、此のハクラク様をはせるかと言って、狐を馬鹿にすると、…—— 佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。