狐の口に塩を押し込んだ爺
どんな伝承か
昔、村の爺が町へ行く途中の野中で遊ぶ狐を見つけ、尻尾をつかもうとしたが何度やっても手から滑り抜け、半日も同じ所を回っていた。通りかかった隣の爺に背中を叩かれ、それは萱の尾花だと言われて正気に戻り、化かされたと知った。悔しがった爺は次の市日に塩を一升買い、同じ野中で酔ったふりをして寝ていた。狐は孫に化けて近寄り、土産はないかと爺の懐に顔を突っ込んだので、爺は跳ね起きて抱きとめ、口に塩を押し込んでやった。狐は鳴きながら山へ逃げた。次の市日にそこを通ると、狐が藪の陰から塩をくわされた者が通るとはやし立て、爺は可笑しかったという。
原典より
爺様はこ、だと思つて、やにはに起き上つて狐を抱き捕へて、買って来た塩を其口に押ツペしてやった。—— 佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。