狐の屋敷の風呂は肥桶だった
どんな伝承か
どんなことがあっても狐には騙されないと言い張る男が山へ行くと、道端の狐が、お前だけはどうしても騙せないから友達になろうと持ちかけた。男が承知すると、狐は美しい娘に化けて自分の住まいを見せると言い、大きな岩穴へ案内した。中には広く立派な屋敷があり、茶や酒肴でもてなされ、今夜は泊まっていけ、まずは風呂へと勧められた。奥座敷にも勝る見事な風呂場で、なみなみと張った湯に肩まで浸かってよい気持ちでいたところ、通りかかった人に何をしていると怒鳴られた。はっと気づくと、男は畑の中の肥桶に浸かって肥まみれになっていたという。
原典より
其所へ通りかつた人に、何だお前は何をして居ると、大きな声で呶鳴られたので、はツと気がついて見ると、自分は畑中の溜桶に入つて、はつぱり肥料ぐるみになつて居た。—— 佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。