岩窟に棲む狐の女に迷う男
どんな伝承か
上閉伊郡大槌町字安堵の渚辺に住む若者が、ある日の夕方、川一つ隔てた大槌の町へ用事に行くと、橋のほとりに見知らぬ老婆が立っていて、風邪の薬を買って来てほしいと頼んだ。若者が買って戻ると老婆は喜び、ぜひ家に寄れと勧める。ついて行くと山峡に岩窟があり、その奥に不思議な家があって、病んだ美しい娘がいた。若者はその夜から娘に迷い、毎夜通い詰めて気抜けのようになった。案じた友人らと訪ねた夜、娘は自分は狐であり、人と交わった罪で近く神に命を奪われると泣いて告げた。翌夕行くと岩窟の家は無く、狐も姿を見せなかった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。