盗人に口止めを返したものいう地蔵
どんな伝承か
六条町に、ものいう地蔵尊として町民に親しまれている地蔵尊がある。昔、一人の泥棒がこの地蔵尊の前でゲラゲラ笑っていた。通りかかった「さる」、すなわち今でいう刑事が、何がそんなにおもしろいのかと尋ねると、男はこう答えた。自分は泥棒を働いてここまで来たが、この地蔵尊は人の言葉が解ると聞いたので、地蔵さん、わたしが盗人だということを誰にも言わずにくだされと頼んだ。すると地蔵さんは、わしは言わぬが、お前も言うなと答えたので、あまりおかしくて笑っているのだ、と。その男はその場で縛られたという。
原典より
六条町にものいう地蔵尊として町民に親しまれている地蔵尊がある。—— 奈良市史 民俗編――伝説(奈良市(編)・奈良市史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
奈良市史 民俗編――伝説(奈良市(編)・奈良市史)
『奈良市史 民俗編――伝説』は、自治体史『奈良市史』民俗編のうち、第十一章「伝説」と巻末の「民俗資料」の冒頭を収めたものである。昭和三十七年から三か年にわたり市内各町の自治会長や古老、社寺を訪ねて集めた伝説に文献の伝えを加え、春日大社・東大寺・興福寺などの社寺や、吉備真備・俊寛・中将姫らゆかりの人物にまつわる話を収める。木・石・塚・水・山・森・社寺・人物・動植物・町名の十節に分け、一話ごとに題を立てて記す。