見物人の中から降った怪石
どんな伝承か
明治二十七年のころの『奥羽日日新聞』の記事による。仙台市良覚院町で起こった石投げは、夏の夜の出来事であった。たちまち噂になり、涼みかたがた見物にくる者が夥しく、そのため寺の細い横町は人混みで通り切れぬほどになった。人々がいつ怪石が降りくるかと待つうち、九時三十分ごろ、同町の地先に突然石塊が降下した。あたかも数年間土中に埋まっていたかのように十分水気を含んだ、縦四寸ばかりの楕円石であったという。それを拾い上げた男に目星をつけて尾行すると、三十分ほどして男の右手のあたりでドシリと音がし、みずから石を拾い上げてさも珍しそうな振りをした。作為であったことが知れた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
妖怪の民俗学――日本の見えない空間(宮田登・宮田登・民俗学・1985年(昭和60年))
『妖怪の民俗学――日本の見えない空間』は、宮田登が一九八五年(昭和六十年)に著した、妖怪の現れる場所を論じた民俗学の書である。柳田国男と井上円了の妖怪論、幽霊と妖怪の違い、口裂け女と産女、皿屋敷、化物屋敷と下女、辻・橋・境の怪異、怪光と怪音、七不思議、通り悪魔と髪切りを、古文献や新聞記事、各地の伝承から読み解く。四章から成り、都市の空間に妖怪が現れる仕組みを軸に据える。