狸を捕らえようとした儒生蒲生亮
どんな伝承か
文化十二年の夏、彦根の明性寺に、住職宗厳の親戚で江戸の儒生蒲生亮が遊覧がてら訪れた。寺の古狸が泊まり客を悩ますのを案じた宗厳は、亮の寝床を自分の寝室に並べさせた。だが亮は、武士の家に生まれながら狸を恐れて同じ部屋に寝るのは外聞が悪い、狸を捕らえて狸汁にし坊主たちを驚かせてやろうと考え、静かな別室でひとり寝たいと申し出た。屏風を立て回し、入口に寺男から借りた鉄の罠を仕掛け、布団をかぶって狸寝入りで待ったが、その夜は珍しく狸が来なかった。十一日間毎晩待っても狸はひっそりとして何もしなかった。亮の気迫を察して避けたのだという。
原典より
次の夜も又待つてゐたに、何の事もなく、遂に十一日間毎夜待つたが、狸はヒッソとして何等貸すところは無かった。—— 動物界霊異誌(岡田建文・岡田建文・心霊研究・1927年(昭和2年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物界霊異誌(岡田建文・岡田建文・心霊研究・1927年(昭和2年))
『動物界霊異誌』は、岡田建文(蒼溟)が昭和二年に著し、郷土研究社から出した動物怪異の記録集である。二十余年にわたって集めた体験や同志の報告から、動物にまつわる怪異の事例を選び、山陰地方を中心とする明治・大正の見聞と、近世の随筆に見える記事を収める。蝦蟇・猫・河童・狐・狸と貉・外道(人狐)・蛇などの動物ごとに、解説・事例・古人の記述の順に並べ、心霊の立場からの考察を加える。