山伏の恨みが燃える日光坊の火
どんな伝承か
江戸期の地誌『諸国里人談』に記された怪火の話。摂津国高槻庄二階堂村には、三月頃から六、七月頃まで現れる火があり、木々の枝先にとどまる陰火で、近くで見ると目・耳・鼻・口の形があり人の顔のようだったという。むかしこの村に日光坊という山伏がおり、修法で村長の妻の病を治した。ところが村長は日光坊と妻の密通を疑って彼を殺してしまう。その恨みが妄執の火となって夜な夜な庭に飛来し、ついに村長を取り殺したと伝えられている。
原典より
後に山伏と女密通なりといふによって日光坊を殺してけり、病癒の恩も謝せず、そのうへ殺害す、この恨、妄心と成りてかの家の庭に夜飛来て、長をとり殺しけるなり、…—— 井上円了 妖怪学講義(井上円了 著・平野威馬雄 編) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
井上円了 妖怪学講義(井上円了 著・平野威馬雄 編)
『井上円了 妖怪学講義』は、明治期に哲学館で講じられた井上円了の『妖怪学講義』から要所を選び、平野威馬雄が現代の文章に改めて編んだ抄録である。狐憑きや化物屋敷、怪火、幽霊、コックリなどを題材に、円了が古書から抜き出した記事、各地から寄せられた報告、円了自身の現地での調べを収める。原著の八部門のうち理学・心理学・宗教学・雑の四部門を章に立て、序で研究の経緯と分類を、結びで編者の見方を述べる。