結婚を拒んだ金屋子神の母神
どんな伝承か
中国地方の鍛冶屋やたたら師が祭る金屋子神については、いくつかの伝えが残る。『金屋子縁起抄』によると、金屋子神の母神は山神王と海竜王を父母として生まれた。母神は自分から夫を求めることを好まないとして何度も結婚を拒んだが、父母のたっての願いによって金山彦と結ばれ、やがて金屋子神を生んだという。筆者は、古典の神名に合わせようとしたこの縁起の根に、母と子の神を祭る古い信仰があったと見ている。
原典より
『金屋子縁起抄』には、その主神の母神は山神王と海竜王を父母として生まれ、父母のせつなる要請によって金山彦と結婚、やがて金屋子神を生んだ、…—— 日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗(原田敏明・池上廣正・堀一郎ほか) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗(原田敏明・池上廣正・堀一郎ほか)
『日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗』は、原田敏明・池上廣正・堀一郎ら十二人の執筆者による論文集である。民間に伝わる神と霊の観念、家や村の氏神、職業の神、祭りの日取りと組織、憑きものや妖怪を題材に、各地の調査報告や古記録に見える事例を引いて論じる。原田の総説に始まる十七編からなり、後半では修験道・庚申信仰・キリシタン・新興宗教と民間信仰とのかかわりを扱う。