南都で天狗が一夜千字を書く
どんな伝承か
天狗にまつわる奇怪な出来事の一つとして、天狗が一夜のうちに千字あまりも書いたという記録が伝えられている。去る二月ごろ、南都に天狗が現れ、一夜の間に人家に千余字を書きつけた。常人の短慮の及ぶところではなく、まことに奇怪なことだと記されている。天狗は歌を詠み、人をさらい、悪戯をするものとして室町期に広く語られた。
原典より
天狗が一夜中に千字餘も書いたこともあつた。—— 動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・1926年(大正15年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・1926年(大正15年))
『動物妖怪譚』は、日野巌が大正六年に筆を起こし、大正十一年の跋と大正十五年の再記を添えて著した伝説の動物の研究書である。鬼・天狗・河童・人魚・雪女・龍・雷獣・狐・狸・獏・鯰・猫など二十六の項目を立て、記紀や万葉集から近世の随筆までの記事を原文の引用ごと示して起源と変遷をたどり、動物学の知識で正体を考える。總論で起原・歴史的変遷・分類などを論じ、結論では迷信から科学へ近づくことを説いて閉じる。