立木に打たれた呪い釘と藁人形
どんな伝承か
山口県大津郡の村々では、神社の境内の木に釘が打ち込まれているのをよく見かけたという。昔は藁人形をこしらえて神社へ運び、立木に打ちつけたもので、丑三つ時の真夜中に行うのが決まりとされた。途中で人に見られると呪いの力が弱まるので、草木も眠る深夜を選ぶのだともいう。しかし実際に見た者はおらず、話には尾ひれがついた。大釘は金槌でなく親指で押し込むのだとか、打った場所は地上三間(約六メートル)もの高さだったとか、気が立っているのでどんな高い所にも跳び上がれるのだといった、荒唐無稽な話が伝わっている。
原典より
むかしは藁人形をつくり、それを神社へはこび立木に打ちつけるのだが、丑三つ時の深更にするのが常例だといわれた。—— 霊魂観の系譜――歴史民俗学の視点(桜井徳太郎・桜井徳太郎・歴史民俗学・1977年(昭和52年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
霊魂観の系譜――歴史民俗学の視点(桜井徳太郎・桜井徳太郎・歴史民俗学・1977年(昭和52年))
『霊魂観の系譜――歴史民俗学の視点』は、桜井徳太郎が一九七七年(昭和五十二年)に著し、筑摩書房から刊行した論文集である。昭和三十二年から五十年にかけて学会誌や雑誌、新聞に発表した論考を収め、民俗学と歴史研究の関係、郷土の民俗像の史的復元、古代のシャマニズムと憑霊、呪いの人形、怨霊から御霊への死霊観を論じる。後半で折口信夫の巫女観と柳田国男の祖先観を検討し、巻末にあとがきと初稿発表覚書を付す。