小田原の漁師が歌うげなし島の唄
どんな伝承か
折口信夫はかつて小田原で、漁師たちが歌っている唄を耳にした。それは下田の沖にあるという「げなし島」を毛のないかわらけになぞらえ、かわらけに手を出せば七日の穢れ、七日どころか一生の穢れになる、と歌うものだった。折口は、このけなし島が処女の時期をたとえたもので、処女を犯した者は七日のあいだ身を慎まねばならなかったことを示すと読んだ。そして、女は神事に仕えて神の成女戒を受け、神の試しを経て初めて男と交わることができたのだと説いている。
原典より
曾て私は、小田原で漁師の歌つてゐる唄を聞いた。—— 霊魂観の系譜――歴史民俗学の視点(桜井徳太郎・桜井徳太郎・歴史民俗学・1977年(昭和52年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
霊魂観の系譜――歴史民俗学の視点(桜井徳太郎・桜井徳太郎・歴史民俗学・1977年(昭和52年))
『霊魂観の系譜――歴史民俗学の視点』は、桜井徳太郎が一九七七年(昭和五十二年)に著し、筑摩書房から刊行した論文集である。昭和三十二年から五十年にかけて学会誌や雑誌、新聞に発表した論考を収め、民俗学と歴史研究の関係、郷土の民俗像の史的復元、古代のシャマニズムと憑霊、呪いの人形、怨霊から御霊への死霊観を論じる。後半で折口信夫の巫女観と柳田国男の祖先観を検討し、巻末にあとがきと初稿発表覚書を付す。