寺の門前で聞こえる小豆洗いの音
どんな伝承か
夜の川辺などで小豆を洗う音がするという怪は各地にあり、アズキ洗いともアズキトギともいった。音はしゃーきしゃーきとも、ごしゃごしゃとも聞こえ、所によっては、小豆を洗おうか人を取って呑もうかと聞こえたといい、大人まで気味悪がった。出る場所は村ごとにほぼ決まっていて、地名に残る所さえある。古書によれば、土佐幡多郡中山田村の寺の門前では、夜になると小豆を洗う音がしてしばらくするとやんだという。晴れの日の食べ物である小豆ばかりを洗うのは、小豆がほかの穀物より呪力のある食べ物とされたからだろうと著者はみる。『譚海』はムジナのしわざとし、イタチとする地方もある。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
河童・天狗・妖怪――民俗随筆(武田静澄・武田静澄・民俗随筆・1956年(昭和31年))
『河童・天狗・妖怪――民俗随筆』は、武田静澄が昭和三十一年に著した民俗随筆である。天狗と神かくし、河童、座敷わらし、山の神と山の妖怪、狐狸とつきもの、水辺や海の亡霊、死霊と御霊などをめぐる伝承を、『今昔物語』などの古典の説話と各地の民俗の事例から集めて語る。短い見出しを立てた小文を連ねる形をとり、神かくしにあう心理や幻覚、お化けの心理にも触れて、妖怪を信じる心のはたらきを考える。