八郎潟に立つ狐のタテ
どんな伝承か
狐のモリタテという現象は日本海北部の方で見られたという。秋田県の八郎潟あたりでは、これを狐のタテと呼んだ。実見した記録によると、海を背にして湖水を隔てた東岸の山々の前に、はじめは大勢の人が列をなし、雪中の行事のようにソリで堆肥を引いてゆくのが見え、それがしだいに松の木のような姿に変わっていったという。東北には広い野の真ん中に現れる土地もある。たいていは旧暦二月の半ば、雪が解けはじめる頃で、土地では狐タテとか狐がサクヲフルといい、それを見たか見ないかによってその年の豊凶を占ったものである。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
河童・天狗・妖怪――民俗随筆(武田静澄・武田静澄・民俗随筆・1956年(昭和31年))
『河童・天狗・妖怪――民俗随筆』は、武田静澄が昭和三十一年に著した民俗随筆である。天狗と神かくし、河童、座敷わらし、山の神と山の妖怪、狐狸とつきもの、水辺や海の亡霊、死霊と御霊などをめぐる伝承を、『今昔物語』などの古典の説話と各地の民俗の事例から集めて語る。短い見出しを立てた小文を連ねる形をとり、神かくしにあう心理や幻覚、お化けの心理にも触れて、妖怪を信じる心のはたらきを考える。