白熊に化けた吾妻山権現
どんな伝承か
六蔵は吾妻山中に入って熊をよく獲ったので、吾妻山の熊が大へん少なくなったといわれた。あるとき志津の自宅で夜半に小用に起きると、家の前に積んだ堆肥の上に大きな白熊が寝ていた。鉄砲を構えると熊は起きて逃げ、遠くに止まる。追いかけて狙うとまた逃げる。時間も場所もわからぬまま追い続け、筒先を向けたときには白熊の姿はなく、白髭白衣の仙人がすっくと立っていた。仙人は、自分は吾妻山権現である、ここは仙台の刈田嶽、今日で三日目だと告げ、狩りをやめて吾妻を昔のように繁盛させてくれと諭した。六蔵は神に誓って家へ戻されたが、のちに再び猟を始め、山中で大きな男に背中を撫でられ、その痛みがもとで死んだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
猪苗代町史 第2集(民俗編)――昔話と伝説(猪苗代町(編)・猪苗代町史)
『猪苗代町史 第2集(民俗編)――昔話と伝説』は、猪苗代町の町史民俗編のうち、第十一章「昔話と伝説」を収めたものである。町内の話者から聞いた方言まじりの昔話と、楊枝峠の力松、皿沼物語、木地小屋村の大蛇、大恩寺の化け灯篭、首なし地蔵、吾磐椅の鬼婆、磐梯明神など、町内の地名や寺社にまつわる伝説を載せる。昔話は動物昔話と本格昔話に分け、伝説の末尾に『新編会津風土記』『耶麻郡誌』などに載る伝説の題を挙げた伝説追補を付す。