妙吉侍者の陀祇尼天法成就
どんな伝承か
『太平記』巻二十六の「妙吉侍者の事」に見える話である。左兵衛督直義が近ごろ驚くほど財をなしていることを羨んだ、夢窓国師の門下の妙吉侍者という僧が、仁和寺に志一房という外法を成就した人がいると聞いてその人に陀祇尼天の法を習い、二十一日間修した。すると法はたちまち成就し、心に願うことで叶わぬものはまったくなくなったという。著者は、軍記物に見える荼吉尼の法が、外法という後ろめたさを抱えながらも立身栄達の秘法として盛んに行われていた例としてこれを挙げている。
原典より
左兵衛督直義朝臣が、近来産をなすこと驚くべきものがあることを羨ましく思った夢窓国師の法眷の妙吉侍者という僧が、…—— 日本の憑きもの――俗信は今も生きている(石塚尊俊・1959年(昭和34年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の憑きもの――俗信は今も生きている(石塚尊俊・1959年(昭和34年))
『日本の憑きもの――俗信は今も生きている』は、石塚尊俊が昭和三十四年に著した研究書である。狐・犬神・蛇などの動物霊が人に憑くという俗信と、それを操るとされる家筋について、全国の伝承と近世以来の文書を集めて論じる。出雲・隠岐・豊後・土佐では筋の家の割合や縁組の偏りを調べ、憑きもの落としの行法や家の神とのつながりまでを七章で追っている。