縫い初めの米と納戸にまつる田の神
どんな伝承か
正月二日に行われる「縫い初め」という行事では、家の女性たちが布や紙で袋をこしらえて米を入れ、それを長く神棚に上げておき、三月の苗田や五月の初田の折に取り出して田の神への供物として炊く。この米を上げる棚は、座敷ではなく寝室にあたる裏の納戸に設けられ、兵庫県宍粟郡・岡山県真庭郡・鳥取県東伯郡・島根県隠岐島・長崎県宇久島の一部などに見られる風習だという。これらの地方ではこの神を田の神であり歳神、亥の子の神でもあるとし、なかでも伯耆東伯郡の山間部では女の神として祀る気風が強く、寝室に田の神を祀り日夜これを守るのは主婦であるという形が明瞭にうかがえる、と石塚尊俊は報告している。
原典より
しかもこの地方では、この縫い初めの米を上げておく神棚、というより田の神の祭壇が、オモテの間などではなく、裏側の納戸である。—— 日本の憑きもの――俗信は今も生きている(石塚尊俊・1959年(昭和34年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の憑きもの――俗信は今も生きている(石塚尊俊・1959年(昭和34年))
『日本の憑きもの――俗信は今も生きている』は、石塚尊俊が昭和三十四年に著した研究書である。狐・犬神・蛇などの動物霊が人に憑くという俗信と、それを操るとされる家筋について、全国の伝承と近世以来の文書を集めて論じる。出雲・隠岐・豊後・土佐では筋の家の割合や縁組の偏りを調べ、憑きもの落としの行法や家の神とのつながりまでを七章で追っている。