女房を連れ去った角の生えた馬の神
どんな伝承か
三宅島では今も一月二十四日の夜は互いに戒めて外へ出ない。出れば神に会うといい、その神とは人の女房を見初めた馬である。昔、島のある家の妻が、いつも神着村の首山のほうを向いて用を足していた。首山に放し飼いの馬がいて、たびたびその姿を見るうちに女房に恋をし、ついに言い寄った。女房はからかい半分に、お前の頭に角が生えたら言うことを聞こうと答えた。すると本当に馬に角が生え、女房は馬に連れ去られてしまった。この馬を祀ったのが首神社、女房を祀ったのがこばし神社だという。島では泣く子に「首山のかうべさまが来るよ」と言えば、すぐ泣きやむという。
原典より
「首山のかうべさまが来るよ」と謂ひさへすれば、一言で型がつく。—— 民俗怪異篇(磯清・磯清・民俗怪異) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
民俗怪異篇(磯清・磯清・民俗怪異)
『民俗怪異篇』は、磯清が著した民間の怪異をめぐる随筆集である。馬を襲う魔物ギバとその禁厭、阿波の首切れ馬「夜行さん」、姫路城の刑部姫や猪苗代城の亀姫などの城の怪、化け猫、灯火による占い、秩父三峰の狼の信仰と狼の怪、怪談を題材とする落語を取りあげ、各地の言い伝えや古い記録を引きながら語る。序に続いて「馬の災と馬の怪」「城の主」「猫」「灯の占」「狼の噂」「落語に存在する怪談」の六篇を置き、それぞれを小見出しの短い話に分ける。