姫路城天守で錣を授けた刑部姫
どんな伝承か
降りしきる秋の雨の夜、姫路城の宿直の一人・森田図書は、賭けに応じて誰も上ったことのない天守七階へ登る。杉戸の奥にいた気高い女人は、ここは人の来る所ではないと告げ、証拠にと兜の錣を図書に与えた。下る途中、大入道に灯を吹き消されるが、再び上って灯を返してもらう。翌朝、城主松平大和守義俊が家宝の兜を検めると、錣はちぎれてなくなっており、図書が授かった錣とぴたりと合った。この天守の主こそ刑部姫と伝えられる。
原典より
もしやと係の侍を呼び出して、お蔵を開いて御家重代の兜をあらためると、錣がない。—— 民俗怪異篇(磯清・磯清・民俗怪異) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
民俗怪異篇(磯清・磯清・民俗怪異)
『民俗怪異篇』は、磯清が著した民間の怪異をめぐる随筆集である。馬を襲う魔物ギバとその禁厭、阿波の首切れ馬「夜行さん」、姫路城の刑部姫や猪苗代城の亀姫などの城の怪、化け猫、灯火による占い、秩父三峰の狼の信仰と狼の怪、怪談を題材とする落語を取りあげ、各地の言い伝えや古い記録を引きながら語る。序に続いて「馬の災と馬の怪」「城の主」「猫」「灯の占」「狼の噂」「落語に存在する怪談」の六篇を置き、それぞれを小見出しの短い話に分ける。