松山城下の野に響く幻の陣太鼓
どんな伝承か
伊予松山の七不思議の一つに、南郷の太鼓がある。松山城の南から西にかけては野原が広がっており、毎年八月の末になると、夜中にどこからともなく、かすかに陣太鼓の音が聞こえてくる。音を頼りに探しに行くと、今度は別の方角から聞こえてきて、どうしても出どころを突きとめられない。この太鼓は、昔長宗我部元親に打ち破られた伊予の軍勢のしわざだと伝えられている。著者は、元親という男は殺した者をことごとく化けて出させずにはおかないと評している。
原典より
毎年八月の末になると、夜半に、何慮からともなく、幽かに、幽かに、陣太鼓の音がして来る。—— 民俗怪異篇(磯清・磯清・民俗怪異) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
民俗怪異篇(磯清・磯清・民俗怪異)
『民俗怪異篇』は、磯清が著した民間の怪異をめぐる随筆集である。馬を襲う魔物ギバとその禁厭、阿波の首切れ馬「夜行さん」、姫路城の刑部姫や猪苗代城の亀姫などの城の怪、化け猫、灯火による占い、秩父三峰の狼の信仰と狼の怪、怪談を題材とする落語を取りあげ、各地の言い伝えや古い記録を引きながら語る。序に続いて「馬の災と馬の怪」「城の主」「猫」「灯の占」「狼の噂」「落語に存在する怪談」の六篇を置き、それぞれを小見出しの短い話に分ける。