高山掃部長者と鬼と化した妻
どんな伝承か
数百年以前、止々井ノ沼のほとりの高山という所に、掃部という日本一を自称する大長者が住んでいた。名は祇春、屋棟四十八、牛馬三百五十、下男二百五十人を抱え、上下胆沢五十七郷を領していた。祇春は悪路を直し橋を架け、貧しい者に衣食を与える慈悲深い人であったが、女房は召使を昼夜こき使う無情な者であった。二年続きの凶作に祇春が密かに蔵を開いて人々を救うと、怒った妻は池の珍魚を食い尽くし、争いの果てに鬼の相となって夫と三人の子を食い殺し、屋形に火を放った。のち沼には二十丈余の大蛇が現れ、毎年生娘一人を贄に出せと告げたという。
原典より
さて話は変りますが、その頃より数百年以前、この止々井ノ沼のほとり高山という所に掃部という日本一を自称する大長者が住んでいました。—— 胆沢町史 11(民俗編4)――口承・伝説(胆沢町(編)・胆沢町史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
胆沢町史 11(民俗編4)――口承・伝説(胆沢町(編)・胆沢町史)
『胆沢町史 11(民俗編4)――口承・伝説』は、胆沢町の町史民俗編の一冊のうち、第四章「口承・伝説」を収めたものである。第一節は松浦佐用姫と高山掃部長者の伝説を扱い、胆沢・水沢周辺の伝説地を列挙したうえで、町内に伝わる佐夜姫の本地物の写本や『南部叢書』所載の「奥州胆沢高山実伝」を翻刻する。第二節「いさわの昔話」は大蛇・狐・むじな・飢饉・戦後の怪異などの話を番号順に並べ、第三節「いろいろな昔話」へと続く。