沼の主となった大きなツブ
どんな伝承か
昔、若柳の市野々近くに八郎という若者がいた。十五で両親を失い、網で小魚や貝を捕って売り、貧しく暮らしていた。ある日、寺の梵鐘ほどもある大きなツブが網にかかったが、気味悪がられて誰も買わない。金持ちの多い秋田で売ろうと担いで山へ入ると、後ろからくつくつと声がする。それが背のツブだと気づいた八郎は気味悪がって野原に投げ捨てた。すると空が暗くなって大雨となり、水が溜まって大きな沼ができた。のち都の人が網を入れるたびに雨が降り、主のツブが荒れるのだと噂され、そこをツブ沼と呼ぶようになったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
胆沢町史 11(民俗編4)――口承・伝説(胆沢町(編)・胆沢町史)
『胆沢町史 11(民俗編4)――口承・伝説』は、胆沢町の町史民俗編の一冊のうち、第四章「口承・伝説」を収めたものである。第一節は松浦佐用姫と高山掃部長者の伝説を扱い、胆沢・水沢周辺の伝説地を列挙したうえで、町内に伝わる佐夜姫の本地物の写本や『南部叢書』所載の「奥州胆沢高山実伝」を翻刻する。第二節「いさわの昔話」は大蛇・狐・むじな・飢饉・戦後の怪異などの話を番号順に並べ、第三節「いろいろな昔話」へと続く。