鼾を立てた大柳の精
どんな伝承か
昔、この地方は見渡す限り川原柳が茂り、その中に一本だけ天に届くような古い大柳があった。胴回りは大人七、八人で抱くほどで、朝日の影は胆沢川を渡って永徳寺境内の観音堂まで届き、夕日の影は北下幅の柳裏屋敷まで映した。その傍の家を柳田屋敷と呼ぶ。地震などの前には枝葉に兆しが現れ、野獣に襲われると得体の知れないものが現れて追い払った。柳の奥から鼾のような音が聞こえるので、人々は柳の精だと信じて供物を捧げた。ある夕暮れ雷が落ちて大柳は東に倒れ、七日七晩燃え、焼け跡から骨のようなものが出たという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
胆沢町史 11(民俗編4)――口承・伝説(胆沢町(編)・胆沢町史)
『胆沢町史 11(民俗編4)――口承・伝説』は、胆沢町の町史民俗編の一冊のうち、第四章「口承・伝説」を収めたものである。第一節は松浦佐用姫と高山掃部長者の伝説を扱い、胆沢・水沢周辺の伝説地を列挙したうえで、町内に伝わる佐夜姫の本地物の写本や『南部叢書』所載の「奥州胆沢高山実伝」を翻刻する。第二節「いさわの昔話」は大蛇・狐・むじな・飢饉・戦後の怪異などの話を番号順に並べ、第三節「いろいろな昔話」へと続く。