春日大明神の告げと佐夜姫売買
どんな伝承か
身代わりの娘を求めて都に上った郡司兵衛吉実は、京の白川まで高札を立てて十日余り待ったが、奥州と聞くと誰もが恐れ、身を売る者は現れなかった。途方に暮れて神仏に祈る吉実の前に客僧がふいに現れ、筑紫肥前の松浦の里に観音の罰で落ちぶれた長者の母娘がいて、娘は父の供養のために身を売るだろうと教え、自らは春日大明神だと名乗って消えた。吉実が船で松浦へ渡り女を買うと触れると、佐夜姫が自ら名乗り出た。吉実は三千五百両を渡し、姫の願う七日の暇に三日を足して十日を許した。姫は金を春日の宮の坂で拾ったと母に偽り、父の法要を盛大に営んだという。
原典より
かかる所にいづく共なく客僧一人忽然と現はれ、吉実に立ち向い如何に商人いづく尋ねめぐらす共、御身に買わるる女なし、…—— 胆沢町史 11(民俗編4)――口承・伝説(胆沢町(編)・胆沢町史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
胆沢町史 11(民俗編4)――口承・伝説(胆沢町(編)・胆沢町史)
『胆沢町史 11(民俗編4)――口承・伝説』は、胆沢町の町史民俗編の一冊のうち、第四章「口承・伝説」を収めたものである。第一節は松浦佐用姫と高山掃部長者の伝説を扱い、胆沢・水沢周辺の伝説地を列挙したうえで、町内に伝わる佐夜姫の本地物の写本や『南部叢書』所載の「奥州胆沢高山実伝」を翻刻する。第二節「いさわの昔話」は大蛇・狐・むじな・飢饉・戦後の怪異などの話を番号順に並べ、第三節「いろいろな昔話」へと続く。