五巻の経で大蛇を成仏させた姫
どんな伝承か
人々が逃げ帰った陸では、十二人の弥宜神主が上下胆沢の境の見分の森に駆け上がり、身御供を受け取れと沖に向かって叫んだ。空はにわかに黒雲に覆われ、雷鳴と車軸の雨のなか、二十丈余りの大蛇が十六の角を振り立てて現れた。姫は驚かず、法華経を読み聞かせてから呑めと告げ、一巻は父の菩提、二巻は母の祈祷、三巻は六道四生への回向、四巻は吉実夫婦の祈祷、五巻は提婆品を大蛇に回向した。経を首に振りかけると大蛇は首を傾けて眠り、十六の角が一度に落ちて水中に入った。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
胆沢町史 11(民俗編4)――口承・伝説(胆沢町(編)・胆沢町史)
『胆沢町史 11(民俗編4)――口承・伝説』は、胆沢町の町史民俗編の一冊のうち、第四章「口承・伝説」を収めたものである。第一節は松浦佐用姫と高山掃部長者の伝説を扱い、胆沢・水沢周辺の伝説地を列挙したうえで、町内に伝わる佐夜姫の本地物の写本や『南部叢書』所載の「奥州胆沢高山実伝」を翻刻する。第二節「いさわの昔話」は大蛇・狐・むじな・飢饉・戦後の怪異などの話を番号順に並べ、第三節「いろいろな昔話」へと続く。