炎上する屋形と沼に消えた大蛇
どんな伝承か
掃部長者の女房は使用人を一日も休ませぬほど強欲で、下女の捕らえた鯉を一人で煮て食べてしまった。その日から喉の渇きが止まらず、いくら水を飲んでもおさまらない。たまりかねて自ら高山の清水へ出かけ、湧き水を飲んでいるうちに土手が崩れて水に落ちた。岸へ上がって水鏡をのぞくと、頭に角が生え、口は耳まで裂け、体じゅうが鱗に覆われていた。急ぎ屋形へ戻って一子の禅司房を食おうと火焰を吐いて探すうち、屋形は焼け落ち、大蛇は向かいの止々井の深泥ヶ池へ躍り込んで姿を消したという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
胆沢町史 11(民俗編4)――口承・伝説(胆沢町(編)・胆沢町史)
『胆沢町史 11(民俗編4)――口承・伝説』は、胆沢町の町史民俗編の一冊のうち、第四章「口承・伝説」を収めたものである。第一節は松浦佐用姫と高山掃部長者の伝説を扱い、胆沢・水沢周辺の伝説地を列挙したうえで、町内に伝わる佐夜姫の本地物の写本や『南部叢書』所載の「奥州胆沢高山実伝」を翻刻する。第二節「いさわの昔話」は大蛇・狐・むじな・飢饉・戦後の怪異などの話を番号順に並べ、第三節「いろいろな昔話」へと続く。