森の祠に納めた守り本尊の薬師
どんな伝承か
贄の場所へ向かう途中、小夜姫の一行は小高い丘の麓にさしかかった。吉実がこの丘からは止々井ノ沼が一望できると告げ、姫も沼の全貌を見ておきたいと丘に登った。眼下には大きな沼が広がり、沖は霞んで、大蛇が乙女をさいなむ場所とは思えぬほど静かであった。この丘が後日、見分森といわれる森である。丘を下る途中、うっそうと茂る樹木の間にひっそりと建つ祠堂を見つけ、姫は吉実に願って立ち寄った。本尊を知る者はなく、おそらく無いだろうというので、姫は錦の袋から守護仏の瑠璃光薬師如来を取り出し、死ぬ身にはもう不要、この土地の衆生のために納めていくと言って奥に安置し、礼拝して立ち去った。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
胆沢町史 11(民俗編4)――口承・伝説(胆沢町(編)・胆沢町史)
『胆沢町史 11(民俗編4)――口承・伝説』は、胆沢町の町史民俗編の一冊のうち、第四章「口承・伝説」を収めたものである。第一節は松浦佐用姫と高山掃部長者の伝説を扱い、胆沢・水沢周辺の伝説地を列挙したうえで、町内に伝わる佐夜姫の本地物の写本や『南部叢書』所載の「奥州胆沢高山実伝」を翻刻する。第二節「いさわの昔話」は大蛇・狐・むじな・飢饉・戦後の怪異などの話を番号順に並べ、第三節「いろいろな昔話」へと続く。