転がる臼と餅を平らげた蟹
どんな伝承か
山の上で猿と蟹が餅をついていると、臼が転がり出して坂を落ちていった。猿は慌てて追いかけ、蟹はのそのそ後から歩いていくと、途中の藪に餅が引っかかっていたので、鋏で切っては食べ、すっかり平らげた。猿は平らな所で止まった臼をのぞいたが中は空で、途中で落としたと気づいて息を切らし坂を戻ると、蟹にごちそうさまと礼を言われ、ひとりで腹を立ててどこかへ行ってしまったという。
原典より
猿はひとりでぶんぶん怒って、どこかへ行ってしまったそうな。—— 長野県上伊那誌 第5巻 民俗篇――昔話・妖怪譚(上伊那誌編纂会・長野県上伊那誌) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
長野県上伊那誌 第5巻 民俗篇――昔話・妖怪譚(上伊那誌編纂会・長野県上伊那誌)
『長野県上伊那誌 第5巻 民俗篇――昔話・妖怪譚』は、郡誌の第十章第一節「昔話 附妖怪譚」の冒頭部分を収める。序は、明治四十年の上伊那校長会の調査、荒井源司・宮下豊秀・有賀喜左衛門の採録、雑誌の所収分から百八十話を選んだと述べ、関敬吾編『日本昔話集成』に従う分類一覧に狐火・山姥・天狗などの妖怪譚の題も挙げる。本文は校長会報告の七話と伊那市手良で採られた五話の計十二話で、狐と狸の話、かちかち山、食わず女房、光前寺の犬の猿神退治などを含む。