若狭から聖水が送られるという二月堂の閼伽井
どんな伝承か
奈良の東大寺二月堂の石段の下には閼伽井という井戸があり、お水取りの行事のときにその水が汲まれる。この井戸はふだんは涸れているのに、お水取りの夜にかぎって水がなみなみと湧き上がると信じられてきた。汲み上げた水は香水と呼ばれ、いただけば多くの病や災いから逃れられるという。井戸の底ははるか若狭の国まで通じていて、若狭の遠敷明神が日本海の若狭湾から送ってよこす聖なる水なのだと言い伝えられている。
原典より
この聖水が若狭の遠敷明神から送られてくるというのは、閼伽井の底が若狭の国まで通じているからであって、—— 日本人物語5――秘められた世界(関敬吾(編)・日本人物語) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本人物語5――秘められた世界(関敬吾(編)・日本人物語)
『日本人物語5――秘められた世界』は、暮らしの奥に秘められた信仰や伝承を扱った全集『日本人物語』の一巻である。境の神や通過儀礼を論じる序論に続き、入らず山や隠れ里、竜宮、平家谷、埋蔵金、生まれ代わり、あの世を見た話、魔法使いと犬神落とし、生霊、隠れキリシタンや隠し念仏などを、伝承と昭和三十年代までの新聞記事・見聞を織りまぜて述べる。序論「生活文化の秘密性――はじめに」の後、「奇蹟」「不気味な神々」などの区分の下に短い節を並べる。