後妻を妬み鶏に生まれ変わった熊川の女
どんな伝承か
鈴木正三の『因果物語』は、若狭国の熊川の話も伝えている。三人の子を残して三十七、八歳で亡くなった女が、鶏に生まれ変わった。鶏となった女は後妻を妬んで突っついたため、杖で追い立てられ、とうとう古い穴に落ちて死んでしまったという。著者は、羽があっても飛べない鶏は地を駆けまわったあげく穴に落ちて死ぬほかなかったのだと、その哀れさを述べている。
原典より
それにしても、若狭国は熊川の、三人の子供を残して三十七、八で死んだ女が鶏となって化生し、さらに後妻を妬んで突っついた結果、杖で追われ、ついには古い穴に落ちて死んでしまったという話はあわれだ。—— にっぽん妖怪の謎(阿部正路・阿部正路・妖怪学・1992年(平成4年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
にっぽん妖怪の謎(阿部正路・阿部正路・妖怪学・1992年(平成4年))
『にっぽん妖怪の謎』は、阿部正路が平成四年に著した日本の妖怪論である。神の零落した姿としての妖怪という見方から、記紀や『今昔物語集』『太平記』、西鶴や『耳袋』、鳥山石燕の画図、近代文学や漫画までを引き、鬼・天狗・河童・狐・蛇・鵼などの出現と変遷を論じる。五章に分け、魔女・妖精・吸血鬼など外国の妖怪を扱う十篇のコラムを挟み、あとがきでは秋田の将軍野に生まれ柳田国男・折口信夫の門流につながる著者の来歴を語る。